エコテックス国際共同体

【INTERVIEW】カイハラ産業株式会社

vol.03

グッドカンパニーであり続けるために。
挑戦しつつ進化をしていく
カイハラデニム

【写真】カイハラ産業株式会社【写真】カイハラ産業株式会社

カイハラ産業株式会社は、エコテックス®25周年記念として開催された「JAPAN OEKO-TEX® AWARD 2017」にて、繊研新聞社賞を受賞。

我々にとってのベストな選択。
それはカイハラ流でありつづけること。

企業理念について教えてください

「すべては一本の糸の品質から始まることを忘れずに」という精神を掲げ、繊維一本で世界へ売っていく企業にしようと取り組んでいます。良いものがあるところには、自然と色々なものが集まってくる。良いものを生み出し続け、常に周りに恵まれている存在でいられるように、社是も各工場の入口に刻印されています。

世界に誇る一貫生産企業として、
御社だから出来ることはなんですか?

繊維を取り巻く環境は、日本ではどんどんシュリンクしていっているのが現状です。後ろ向きな意見も多い。しかし、過去を振り返ると、カイハラは悪くなったときこそ新たな挑戦をして、今に繋げてきたという実績があります。カイハラが紡績を始めたのは1991年。すでに日本の繊維業界はシュリンクし始めていて、紡績をやっている企業もどんどん事業を縮小、もしくは撤退していくような時期でした。なぜそのタイミングで挑戦したのかというと、トータルで物づくりをする中で非常に大切な「糸」を自分たちが責任を持って作り上げることで、品質と効率UPに繋がり、それが何よりの強みとなると感じたからです。我が社はプライベートカンパニーですが、自分たちの判断で全てを決めることができる強みを最大限に活かし、例え赤字経営でも設備投資をして次のチャンスへ向けて備えることができます。10年先、20年先を見据えた投資をしていくことが生き残る方法だと常に感じています。自分たちの判断で全てを決めることができる、ということを強みにしてきました。それが、我が社が125年生き残ってこれた大きな力だと思いますね。

【写真】カイハラ産業株式会社【写真】カイハラ産業株式会社

一貫生産の企業として、今後注力していきたいことを教えてください

設備投資です。我々がやっているのは“物づくり”です。物を作るには、やはり設備投資をしていかなくてはいけません。その時々のニーズに応じて、設備投資をし、最新鋭の機械を入れることによって、生産性、品質を向上させていく。そうでなくては世界で戦えないんです。

貝原会長が見る、繊維業界の今とこれからを
見据えて

繊維は海外ではまだまだ成長産業です。日本では決して伸びて行っている業界ではないですが、服を着れない人が世界にはたくさんいることを考えると、衣料というのはまだまだ成長産業であるという見方もできるんです。我々のマーケットが日本だけだったら、ここ何十年も設備投資をする必要はなかったかもしれないですが、我々は世界に売って行こう、戦おうとしているわけですから、彼らと同等に戦えることをしないといけない。“変わらない”というのは、決して良いことではないと思っています。挑戦していくことにこそ意味があると考えています。それが、我々が生き残る方法だと思うんです。
我が社のデニムは日本で50%以上のシェアを占めています。海外では何百億という投資をする価値のある成長業界ですが、日本では多くの企業がいかに撤退しようかを考えています。デニムに対して我が社ほどの投資をしている企業は日本国内では他にはないでしょう。我々は、量を追求しても勝てない。値段で追及しても勝てない。量と価格で競争をしていくことはできないんです。海外では一貫生産というのは当然の形なので、量もあり、値段的にも安ければまだまだ売れるチャンスはあり、そういった商品は今後もどんどん出てくるでしょう。
そこで我が社は、より高いレベルを提案していきます。安さではなく、新しいもの、マーケットにない物を作っていくことに挑戦しています。

【写真】カイハラ産業株式会社

我々は、年間に700~1000のサンプルを作っています。
他との差別化、ブランド力の向上を考えると、開発力、探究心は欠かせないものであり、それを実現させる技術力も必要になります。
良い物を作っていたとしても、商品をただ「見てください」というのでは、なかなかお客さまは納得しない時代です。
どういう背景で作っているかをきちんとプレゼンをしないと通用しないんです。丁寧に説明することが、彼らに受け入れてもらえるということだと思います。

これから一番大切になってくることとは?

マーケティング力が非常に大事だと感じています。以前、ある大手ジーンズショップさんにお願いをして、5月の連休に吉祥寺、新宿、原宿、渋谷、横浜の店舗で売れたデニムの裾直しで出た切り端を、全て着払いで送ってもらったことがあるんです。それを種類別に並べてみると、売れているもの、人気のあるものが見えてくるんです。そこから出たデータを、ブランドさんにご提案して商品作りに活用したこともあります。我々は、ブランドさんから「こういうものを作ってほしい」と言われたものをそのまま作るのではなく、こちらからもご提案できる体制を整えておくべきだと考えています。独自のマーケティングデータをまとめておき、アパレルさんとディスカッションしながら商品を作っていくんです。我々の商品は、ただ提供するだけでは「彼らは高いだけだ」となる価格帯なので、共に作り上げていくということを強みとして取り組んでいます。

「エコテックス®スタンダード100」認証を取得したことについて聞かせてください

お客さんから100点満点の中の80点以上を求められたら、うちは85点のものを提供できるレベルで仕事を受けようと思っています。求められる条件が難しくなればなるほど、我々にとっては商売のチャンスが増えると思っているんです。商品品質に求められるレベルはどんどん高くなっています。世界の流れがそうなっているし、中でもヨーロッパは特に厳しいですよね。その流れに乗り遅れることなく、スペックを上げていけるのは我々にとってたいへん喜ばしいことだと思っています。エコテックス®認証取得に関しても、それをクリアするためにいろいろなことをやっているわけですが、その取り組みが製品のクオリティのみならず、CSR面から見ても、我々をより一流へと導いてくれていると感じています。

【写真】カイハラ産業株式会社【写真】カイハラ産業株式会社

感謝の気持ちを伝える場を設ける

年に一度、毎回300人ほどの取引先や協力会社の方々を集めた
「カイハラ会」を開催されるとお聞きしました。
取引先のみなさんに感謝を伝える主旨の会を開催される理由はなんですか?

祖父、父親からもよく言われていたことですが、我々がどんなにいい物を作っても、原材料をを売ってもらえなかったら意味がないんです。買ってもらえるだけの信用力を持たなきゃいけない。我々は常に「売ってもらっている」、「買ってもらっている」と言う考え方なんです。我々は常に、「売っている」「買っている」というのは50/50の関係だと思っています。その皆さんが一同に会してくださることで、我々の日頃の感謝の気持ちを伝えることができる。それはもう我々にとっては非常にありがたいことなんです。

どんな企業であり続けたいと考えていらっしゃいますか?

グッドカンパニーでありたいですね。
いろんな意味で、企業は続けなかったら意味がないと思っています。それも、進化し続けながらでなくてはいけない。今の流れから考えると、エコや環境問題に対しての取り組みなどいろんなことをひっくるめて、業界では注目され続ける会社でありたいと思います。アピールしなくても理解してもらえるような会社であることが理想です。それとやはり大事なのは、少しでも従業員へ多く還元できる会社でありたいと思います。サステイナブルなグッドカンパニーであるための大切な要素ですから。